2003年7月X日 映画 ”デブラ・ウィンガーを探して”を見ました

 この映画の最大の魅力は、30代から60代の女優が映画の中と違う魅力を見せてくれることにつきるのでは。監督でインタビューワーのロザンナ・アークウェットが同世代の女優ということで、リラックスして話をしている人も何人かはいるようだ。30数人の女優ということは一人あたりの時間は短いから、ロングインタビューで真相に迫るということは期待できない。NHK教育TVで随時放送している、ジェームス・リプトンのインタビュー番組、アクターズスタジオインタビューのほうが、女優の個性が自然にあぶり出されて私にはおもしろかった。この映画では仕事と家庭の両立ということに絞っているのだけれど、今成長中の子供を持っている人に、子供を傷つけるような本音を聞く方が無理というものだろう。むしろそれ以外の所に見るべきものが多い。元々美人で口の悪い女性が好みの私なので存分に楽しめた映画だった。

 予定外の出演のように見えるシャーロット・ランプリングは撮影当時55才、圧倒的な魅力だが、手がテーブルの上のものを神経質にいじり続ける。見ていけないものを見てしまったようにファンの私には感じられる

 私と同い年のジェーン・フォンダは、50本弱でた映画のうち、僅か8本の映画の演技の時に訪れたという、どんなセックスより素晴らしいエクスタシーについて語っている。これは全くはっきりしない彼女引退についての話よりおもしろく、この映画のクライマックスだろう。

 これも同い年のウーピー・ゴールドバーグはサービス満点、語り口が楽しくうまくひきこまれるが、後で考えるとうまく交わされた感じ。でも嫌みな感じはみじんもなく魅力的だ。

 ホリー・ハンターは率直に語っているようだ。小さな体の中の爆発的なエネルギーは映画の中よりも感じられる。

 グウィネス・パルトロウは当時29才、早くして成功を収めて自信に満ちあふれているが、映画界のエリートの出身ということもあるのか、まだまだ夢見る少女のようで映画のテーマとはかみあっていない。

 ヴァネッサ・レッドグレーブは当時61才、”ジュリア”でジェーン・フォンダと共演した時の壊れそうな感じはすでにないが、”ダロウェイ夫人”の時の濃厚な魅力は健在、率直な語り口と見えたのは私が昔からファンだからだろうか。

 メグ・ライアンは前に述べたアクターズスタジオインタビューでは映画の役のイメージと全く違う、いたずら好きな奔放さと、頭のか回転の良さを感じさせてくれたが、この映画ではセクシー女優に対するプレッシャーという意外なことについて語っていた

 エマニュエル・ベアールはフランス人的といっていいのかクールな語り口が素敵、でもこれもファンだから点が甘くなったのかも

 そして、肝心のデブラ・ウィンガーだがアムトラックの列車の音が好きという発言以外は要領を得ない受け答え。この映画を見た後、彼女の出世作”愛と青春の旅たち”を初めてNHK-BSでみたが、目配りのきいた良い脚本(ラストシーンについては人気が高いようだが工夫がないと思ったが、ハリウッド映画に粋な結末を望むのが無理というものか)の中でもうけ役というだけで、製紙工場で働く女子工員という役どころに見えず、これでアカデミー賞ノミネートは作品の大ヒットのおかげかなと思ってしまった。他に主演作で見たのはやはりBSで. シェルタリング・スカイ (1990)だけだが、ここではベルナルド・ベルトルッチの魔力のせいか悪くはなかったと思うが、強烈な記憶はない。

 唯一男性で語る映画評論家ロジャー・エバートの、今の少年はセックスに興味が無い、大人の見る映画が無いというコメントがいちちいなるほどという感じですっきりした。

 映画としては、映像のムラがとても気になった。低予算のせいで家庭用ビデオカメラも併用しているためか、引いた画像になると目を覆うほどの汚い画面がとことどころに出現、ドキュメンタリーだって映画は映画、映像をもっと大事にして欲しかった

©Seki Kenichi    index  BBSにメッセージを