私の読書 2008年のベスト10

2008年に読んだ本のベストテンを選んでみました。新刊が一冊も無かったのに驚き。買う本も古い本ばかりでした。簡単なコメントも。

第1位
ヴィットリーニ  シチリアでの会話


 故郷シチリアを訪れる作者の、瑞々しく象徴に満ちたドキュメンタリー的小説。ファシズム体制下でかかれたので解説を読まないと分からない事も多いが、エロティックなまでの生命力と透明さが同居している。

 

第2位 
アービング アルハンブラ物語

  19世紀前半にかかれたアメリカ外交官によるグラナダ滞在記。現地の人との交流、アルハンブラの伝説、暖かくつつみ込むような視線が心地よい。

 

第3位
カポーティ 遠い声遠い部屋

 濃厚な味、何も起こらないのにめくるめく雰囲気大好きです。カポーティはどれもすばらしい。

 

第4位
平家物語(古文)

 注を見ながら古文で読んだらこんなに面白いのかと感動、滅びる物への眼がすばらしい。勝った源氏はそれに比べると魅力がない。

第5位
ケイ・ジャミソン 早すぎる夜の訪れ 自殺の研究

 研究者による実証的な自殺についての本。特に若い人の自殺に関して豊富な実例と、文学の分析でとても腑に落ちる一冊。作者も自殺未遂経験者で、精神科医にもはびこる無理解をも嘆いている。精神的な病無しにほとんどの自殺は実行されないという主張は説得力がある。

 
第6位
ドナルド・キーン 能・文楽・歌舞伎

 3種の古典演劇についての本だが興味の中心は能に。日本人の書いた本より本質に迫っている印象だ。テクストに関する思い入れが共感できる。

 
第7位
時実新子 有夫恋

 初めて通読した俳句だけの本。2句引用
   泣くほどの軽い別れは昔あり
   一つだけ言葉惜しめばまた逢える

 
第8位
コンラート・ローレンツ ソロモンの指輪  動物行動学の古典と言われるだけにはっと思うことばかり  
第9位
ジョセフ&フランシス・ギース 中世ヨーロッパの農民生活  イギリス中世の或る村の生活を多面的に実証的に書いた本。地主との裁判、農耕、喧嘩や犯罪、村の色々な階層を多面的に描き、昔も今も色々な人色々な生活がある事が分かる。  
第10位
ロブション ロブション自伝  世界で最も有名なシェフの一人 ジョエル・ロブションが生い立ちから、修業時代、レストランの経営から料理記者とのつきあい方まで率直に書いた本。清潔さを強調する所、原価の秘密などどこもおもしろい。  

 

2002

©Seki Kenichi